大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和42(あ)513 決定

主 文

本件各上告を棄却する。

理 由

弁護人小林直人、同谷川宮太郎、同新井章の上告趣意第一点および被告人五名連

名の上告趣意第一は、公共企業体等労働関係法一七条一項を違憲でないとした原判

決は憲法二八条の解釈適用を誤つたものという趣旨のものであるが、公共企業体等

労働関係法一七条一項に違反してなされた争議行為についても、労働組合法一条二

項の適用の余地があるとの見地に立ち、本件各所為ごとに、正当性の有無を判断し

ている原判決の当否を判断するにあたり、公共企業体等労働関係法一七条一項が憲

法二八条に違反するかどうかは、何ら影響を及ぼすものではない。従つて、右の違

憲の主張は、上告適法の理由にあたらない。 右被告人らの上告趣意第二は、原判

決が公共企業体等労働関係法四条三項の違憲性および国鉄当局の団体交渉拒否行為

の当否を判断せず、本件順法斗争を違法としたのは、判断遺脱・理由不備の違法を

おかし、さらに憲法二八条に違反するという趣旨のものであるが、原判決は、本件

各所為につき、その争議目的は正当なものであるとしたうえ、その手段たる行為の

態様上、労働組合法一条二項の正当性がない旨判断しているのであるから、原判決

が公共企業体等労働関係法四条三項の違憲性および国鉄当局の団体交渉拒否行為の

当否を判断していないからといつて、判断遺脱、理由不備の違法はない。従つて、

所論は、前提を欠く不適法な違憲の主張である。

右弁護人らの上告趣意第三点は、第一審で無罪とされた、

イ 第一現場における被告人Aおよび同Bの行為(原判示第一)

ロ 第三現場における被告人Cおよび同Aの行為(原判示第二)

ハ 第四現場における被告人D、同E、同C、同Aおよび同Bの行為(原判示第三)

につき、原判決は、事実の取調べをすることなく一審判決を破棄し、自判して被告

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人らの行為を有罪としているが、これは、刑訴法四〇〇条但書にもとづき訴訟記録

および第一審裁判所において取り調べた証拠だけの書面審理によつて公訴事実の存

在を確定し、有罪の判決を言い渡した結果となり、昭和三一年七月一八日大法廷判

決(刑集一〇巻七号一一四七頁)の判例に違反するという趣旨のものである。

しかし、所論判例は、第一審判決が被告人の犯罪事実の存在を確定せず無罪を言

い渡した場合にかかるもので、犯罪事実を確定したうえ、法令の解釈適用上無罪を

言い渡した場合を含まないものであるところ、所論の各事実については、第一審判

決は、証拠の標目をかかげ、各事実の認定をしたうえ、法律判断の問題として、罪

にならないとしており、原判決は、法律上の見解の相違にもとづき、これら事実に

つき有罪の言渡をしているにとどまるものであるから、所論判例は、本件に適切で

なく、上告適法の理由にあたらない(昭和三九年(あ)第三〇五号同四四年一〇月

一五日大法廷判決)。

右弁護人らの上告趣意第四点および第五点中に、原判決が、本件につき不当に厳

格すぎる独自の正当性判定の基準を設定適用し、三現場の斗争につき正当性を否定

したことは違法で、昭和四〇年(あ)第三九九号同四二年二月七日第三小法廷判決

の判例に違反している旨の主張があるが、所論判例は、労働組合のいわゆる点検活

動について、住居侵入罪の成否の判断をしているもので、組合活動としてなされた

ピケツテングが威力業務妨害罪にあたるかどうかが問題となつている本件とは事案

を異にし、本件に適切でない。また、被告人らの上告趣意第一中には、原判決は、

昭和三九年(あ)第二九六号、同四一年一〇月二六日大法廷判決の判例に違反して

いる旨の主張があるが、原判決のいかなる部分が、引用の判例のいかなる部分と異

なる判断をしたかを具体的に明らかにしていないものである。従つて、以上いずれ

も上告適法の理由にあたらない。

右弁護人らの上告趣意および右被告人らの上告趣意のその余の点は、いずれも、

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事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらな

い。また、記録を調べても、同法四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官下村三郎、松本正雄

の意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

裁判官下村三郎の意見は次のとおりである。

公共企業体等労働関係法一七条一項は、争議行為を禁止しているのであるから、

これに違反してなされた争議行為は、すべて違法であつて、正当な争議行為という

ものはありえない。したがつて、このような争議行為には、労働組合法一条二項の

適用はないものと解すべきである。その理由の詳細は、昭和三九年(あ)第二九六

号昭和四一年一〇月二六日大法廷判決(刑集二〇巻八号九〇一頁)における裁判官

奥野健一、同草鹿浅之介、同石田和外三裁判官の反対意見と同趣旨であるから、こ

こにこれを引用する。

そして、右見解によれば、原判決が、被告人らの本件各所為について正当な争議

行為の範囲内にとどまるものかどうかの点を判断しているのは、法令の解釈を誤つ

たものであるといわなければならない。しかし、原判決は、結局において、被告人

らの本件各所為がいずれも正当な争議行為にあたらないとして、威力業務妨害罪の

成立を認めているのであるから、右の誤りについて刑訴法四一一条を適用すべきも

のとは認められない。

裁判官松本正雄の意見は次のとおりである。

わたくしは、本件争議行為は公共企業体等労働関係法一七条一項に違反してなさ

れた違法なものであるから、これについては労働組合法一条二項の適用はなく、正

当性の有無を論ずる余地はないと考える。この点に関しては、当第三小法廷昭和四

三年(あ)第一六八四号同四五年七月二一日決定において、わたくしの意見として

述べたところと同じであるから、ここにこれを引用する(なお、当第三小法廷昭和

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四二年(あ)第一三七三号同四五年六月二三日決定の松本裁判官反対意見参照)。

わたくしの見解は右のとおりであるから、本件争議行為にも労働組合法一条二項

の適用があることを前提として、その正当性を判断している原判決は、法令の解釈

を誤つたものと思料する。しかしながら、原判決は、その結論としては、本件各所

為がいずれも争議行為としての正当性を有しないものとして、威力業務妨害罪の成

立を認めているから、その誤りについては、刑訴法四一一条を適用すべきものとは

認められない。

昭和四五年一二月一五日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 飯 村 義 美

裁判官 田 中 二 郎

裁判官 下 村 三 郎

裁判官 松 本 正 雄

裁判官 関 根 小 郷

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